第1節 風水害に強いまちづくり

〔全 課〕

町は、将来の気候変動の影響等外部環境の変化や、地域の特性に配慮しつつ、交通・通信施設の風水害に対する安全性の確保、治山、治水事業等の総合的、計画的推進等風水害に強い郷土を形成し、建築物の安全性の確保、ライフライン施設等の機能の確保等風水害に強いまちづくりを推進する。

また、「自らの命は自らが守る」という意識の徹底や、地域の災害リスクととるべき避難行動等についての住民の理解を促進するため、行政主導のソフト対策のみでは限界があることを前提とし、住民主体の取組みを支援・強化することにより、社会全体としての防災意識の向上を図る。

1 風水害に強い郷土づくり

(1) 総合的・広域的な計画の作成に際しては、暴風、竜巻、豪雨、洪水、土石流、崖崩れ等による風水害から郷土及び住民の生命、身体、財産を保護することに十分配慮する。

(2) 基幹的な交通・通信施設等の整備に当たっては、ネットワークの充実等により、大規模災害発生時の輸送・通信手段の確保に努める。

(3) 住宅、学校や医療施設等の公共的施設等の構造物、施設の安全性の確保等に努める。

(4) 風水害に強い郷土の形成を図るため、次の事項に配慮しつつ、治山、治水、急傾斜地崩壊対策、農地防災等の事業を総合的、計画的に推進する。

ア 当面の目標として、時間雨量50oの降雨に対する河川の整備を推進する。

イ ひとたび発生すると大きな被害になることが多い土砂災害について、その対策を推進する。

ウ 台風、集中豪雨等に伴う山地災害に対処するため、山地治山施設等の整備を推進する。また、山地災害の発生を防止するため、森林の造成及び維持を図る。

(5) 社会資本の維持管理

老朽化した社会資本について、長寿命化計画の作成・実施等により、その適切な維持管理に努める。

(6) 大規模広域災害時に円滑な広域避難及び広域一時滞在が可能となるよう、大規模氾濫減災協議会など既存の枠組みを活用することにより国や他の地方公共団体との協力体制の構築に努めるとともに、他の地方公共団体との応援協定を締結するなど、災害時の具体的な避難・受入方法を含めた手順等を定めるよう努める。

2 風水害に強いまちづくり

(1) 風水害に強いまちの形成

ア 治水・防災・まちづくり・建築を担当する各部局の連携の下、有識者の意見を踏まえ、豪雨、洪水、土砂災害等に対するリスクの評価について検討する。特に、豪雨や洪水のリスク評価に際しては、浸水深や発生頻度等を踏まえて検討するよう努める。また、これらの評価を踏まえ、防災・減災目標を設定するよう努める。

イ 町は、土砂災害警戒区域内に要配慮者利用施設で土砂災害のおそれがあるときに利用者の円滑かつ迅速な避難の確保が必要な施設の名称及び所在地について定める。名称及び所在地を定めた施設については、本計画において、当該施設の所有者又は管理者に対する土砂災害に関する情報等の伝達について定める。

ウ 町は、土砂災害警戒区域の指定を受けた地域については、情報伝達、予警報の発令・伝達、避難、救助、その他必要な警戒避難体制に関する事項について定めるとともに、情報伝達方法、指定緊急避難場所、指定避難所(町では、指定緊急避難場所及び指定避難所を「避難所」ということとする。以下、本計画において同じ。)及び避難経路に関する事項その他警戒区域における円滑な警戒避難が行われるために必要な事項について、住民等に周知する。また、基礎調査の結果、土砂災害警戒区域に相当することが判明した区域についても、土砂災害警戒区域の指定作業と並行して、上記と同様の措置を講じるよう努める。

エ 洪水、崖崩れ等による危険の著しい区域については、災害を未然に防止するため、災害危険区域の指定について、検討を行い、必要な措置をとる。なお、災害危険区域の指定を行う場合は、既成市街地の形成状況や洪水浸水想定区域等の状況を踏まえ、移転の促進や住宅の建築禁止のみならず、避難上有効な高さを有する屋上の設置など、様々な建築の制限を幅広く検討する。

オ 防災まちづくりの推進にあたっては、災害リスクを十分考慮の上、居住誘導区域を設定するとともに、同計画にハード・ソフト両面からの防災対策・安全確保対策を定める防災指針を位置付ける。

カ 町は、防災拠点等の災害時において防災に資する公共施設の積極的整備を図るとともに、対応する災害に応じて防災拠点施設等の浸水防止機能、土砂災害に対する安全確保に努める。

キ 危険な盛土が確認された場合は、各法令に基づき、速やかに撤去命令等の是正指導を行う。また、その内容について、県と情報共有を行うとともに、必要に応じて住民への周知を図る。

ク 道路防災対策等を通じて、強靭で信頼性の高い道路網の整備を図る。また、避難路、緊急輸送路など防災上重要な経路を構成する道路について、災害時の交通の確保を図るため、必要に応じて、区域を指定して道路の占用の禁止又は制限を行うとともに、国が促進する一般送配電事業者、電気通信事業者における無電柱化の取組と連携しつつ、無電柱化の促進を図る。

ケ 次の事項を重点として総合的な風水害対策を推進することにより、風水害に強いまちを形成する。

(ア) 溢水(いっすい)(たん)(すい)等による災害の発生のおそれのある土地の区域について、豪雨、洪水、土砂災害等に対するリスクの評価を踏まえ、都市的土地利用を誘導しないものとし、必要に応じて、移転等も促進する等、風水害に強い土地利用の推進

(イ) 住民が自らの地域の水害リスクに向き合い、被害を軽減する取組みを行う契機となるよう、分かりやすい水害リスクの開示

(ウ) 河川、河道掘削、遊水地、放水路、雨水渠等の建設等の推進

(エ) 防災調節(整)池の設置、透水性舗装の実施、雨水貯留・浸透施設の設置、盛土の抑制などを地域の特性を踏まえつつ必要に応じて、実施することによる流域の保水・遊水機能の確保

(オ) 浸水想定区域の指定のあったときは、本計画において、少なくとも当該浸水想定区域ごとに、洪水予報等の伝達方法、避難場所及び避難経路に関する事項、洪水又は雨水出水に係る避難訓練に関する事項その他洪水時又は雨水出水時(以下「洪水時等」という。)の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な事項の規定

(カ) 洪水、雨水出水、土砂災害等による浸水実績、浸水想定区域及び土砂災害警戒区域等の公表による、安全な町土地利用の誘導、風水害時の避難体制の整備の促進

(キ) 洪水浸水想定区域が指定されていない中小河川について、河川管理者から必要な情報提供、助言等を受け、過去の浸水実績等を把握したときは、水害リスク情報としての住民、滞在者その他の者へ周知する。

(ク) 土砂災害のおそれのある箇所における砂防設備、急傾斜地崩壊防止施設の整備等に加え、土砂災害に対する警戒避難に必要な雨量計等の設置及び流木・風倒木流出防止対策を含めた、総合的な土砂災害防止対策の推進

(ケ) 高齢者等に経済的・身体的に特に大きな負担を与える慢性的な床上浸水被害を解消するための床上浸水対策や、指定緊急避難場所、指定避難所、避難路等の防災施設及び医療施設、老人ホーム等の要配慮者利用施設に対する土砂災害対策を重点的に実施する等の生活防災緊急対策の推進

(コ) 土砂災害警戒区域における情報伝達、予警報の発令、伝達に関する事項、避難場所及び避難経路に関する事項、土砂災害に係る避難訓練に関する事項、避難、救助その他必要な警戒避難体制の整備の推進

(サ) 山地災害危険地区等における治山施設の整備等のハード対策と、山地災害危険地区に係る監視体制の強化、情報提供等のソフト対策の一体的な実施や、地域の避難体制との連携による減災効果の向上を図るとともに、森林の整備・保全の推進により、山地災害危険地区の総合的な山地災害対策を推進

特に、尾根部からの崩落等による土砂流出量の増大、流木災害の激甚化、広域にわたる河川氾濫など、災害の発生形態の変化等に対応するため、流域治水の取組と連携しつつ、土砂流出の抑制、森林土壌の保全強化、流木対策等を推進

また、脆弱な地質地帯における山腹崩壊等対策や巨石・流木対策などを複合的に組み合わせた治山対策を推進するとともに、住民等と連携した山地災害危険地区等の定期点検を実施

(シ) 農業用排水施設の整備及び農地保全対策の推進

(ス) 災害発生時に被害の拡大を防ぎ、防災機能を高めるために、面的防護方式のような複数の施設を有機的に連携させる方式等の推進

(2) 風水害に対する建築物等の安全性

ア 不特定多数の者が利用する施設、学校、行政関連施設等の応急対策上重要な施設、要配慮者に関わる社会福祉施設、医療施設等について、風水害に対する安全性の確保に特に配慮する。

イ 住宅をはじめとする建築物の風水害に対する安全性の確保を促進するため、基準の遵守の指導等に努める。

ウ 強風による屋根瓦の脱落・飛散防止を含む落下物の防止対策を図る。

(3) ライフライン施設等の機能の確保

ア ライフライン施設の機能の確保策を講ずるに当たっては、大規模な風水害が発生した場合の被害想定を行い、想定結果に基づいた主要設備の風水害に対する安全性の確保、災害後の復旧体制の整備、資機材の備蓄等を行う。

イ ライフラインの被災は、安否確認、住民の避難、救命・救助等の応急対策活動などに支障を与えるとともに、避難生活環境の悪化等をもたらすことから、町は、上下水道等のライフライン施設等の風水害に対する安全性の確保を図るとともに、系統多重化、代替施設の整備等による代替性の確保を進める。

ウ コンピュータシステムやデータのバックアップ対策を講ずるとともに、企業等における安全確保に向けての自発的な取組みを促進する。

(4) 災害応急対策等への備え

ア 災害時の災害応急対策、災害復旧・復興を迅速かつ円滑に行うための備えを平常時より十分行うとともに、職員及び住民個々の防災力の向上及び人的ネットワークの構築を図る。

イ 特に、災害時においては状況が刻々と変化していくことと、詳細な情報を伝達するいとまがないことから、情報の発信側が意図していることが伝わらない事態が発生しやすくなる。このようなことを未然に防ぐ観点から、防災対策の検討等を通じて、平常時から災害時の対応についてコミュニケーションをとっておくこと等により、「顔の見える関係」を構築し信頼感を醸成するよう努めるとともに、訓練等を通じて、構築した関係を持続的なものにするよう努める。

ウ 指定緊急避難場所、指定避難所、備蓄など、防災に関する諸活動の推進に当たり、公共用地等の活用を図る。

エ 民間企業等を含む関係機関との間で協定を締結するなど、連携強化を進めることにより、迅速かつ効果的な応急対策等が行えるように努める。

また、協定締結などの連携強化に当たっては、訓練等を通じて、災害時の連絡先、要請手続等の確認を行うなど、実効性の確保に留意する。

オ 民間事業者に委託可能な災害対策に係る業務(被災情報の整理、支援物資の管理・輸送等)について、あらかじめ協定を締結しておくなど、協力体制を構築し、民間事業者のノウハウや能力等の活用に努める。

カ 他の関係機関と連携の上、災害時に発生する状況をあらかじめ想定し、災害対応を時系列で整理した防災行動計画(タイムライン)を作成するよう努める。また、災害対応の検証等を踏まえ、必要に応じて同計画の見直しを行うとともに、平時から訓練や研修等を実施し、同計画の効果的な運用に努める。

キ 随意契約の活用による速やかな災害応急対策ができるよう、建設業団体等との災害協定の締結を推進する。

ク 平常時より、災害による被害が予測される空家等の状況の確認に努める。